「はじめに」の書き方
学術論文における「はじめに」「序章」は、読者に対して論文全体の概要を示すためのものです。すなわち、その論文がどのような地平に立ってどのような問題にアプローチするのか、その問題についてこれまではどのように論じられていたのか、先行研究に対して、この論文はいかなる結論を主張し、その結論を説得的に主張するためにいかなる論証の手続きをとるのかがわかるように書いておくのが良いでしょう。「はじめに」には様々な書き方がありますが、代表的な2つを紹介しておきます。
(1)その問題に対してすでに多くの先行研究がある場合。
第一段落:考察対象について問題を立てるべき地平を準備する。
第二段落:その事実を踏まえたうえで論文の課題を明らかにする。
第三段落:その問題に対する先行研究の紹介と、それに対する批判。
第四段落:論文の結論を先取りして提示する。問に対して必要十分に答えること。
第五段落:「第一章では…を明らかにし、第二章では…」というように論証の手順を説明する。
(2)先行研究を調べているうちに新たな疑問が湧いてきた時に使用するパターン。
第一段落:考察対象について問題を立てるべき地平を準備する。
第二段落:考察対象についての先行研究の紹介と、それに対する批判。
第三段落:先行研究への批判を踏まえて論文の課題を明らかにする。
第四段落:論証の手順と各章での結論を説明する。
※この「はじめに」の書き方は岸文和教授が整理されたものです。
人名表記の仕方
初出の人名の後には生没年をつける。【例】東松照明(1930-2012)
漢字圏以外の人名には、原綴をつける。【例】フェリックス・ベアト(Felix Beato, 1834-c.1903)
日本人名の略称の仕方
近代以前は名前や号。【例】(鈴木)春信、(狩野)探幽
近代以降は苗字。【例】土門(拳)、伊奈(信男)
日本画家の場合は号で呼ぶことが多い。【例】(竹内)栖鳳、(橋本)関雪
西洋人名の略称の仕方
基本的には苗字。【例】ピカソ、モネ
二つ以上が繋がった苗字はすべて書く。【例】カルティエ=ブレッソン
西洋人名を日本語(カタカナ)で表記するときのルール
スペースはナカグロ。【例】Pablo Picasso→パブロ・ピカソ
ハイフンは等号。【例】Henri Cartier-Bresson→アンリ・カルティエ=ブレッソン
カッコの使い方
「 」カギカッコ → 引用文/論文・章の題名/シリーズ名/展覧会名
『 』二重カギカッコ → 書名/映画の題名
《 》二重ヤマガッコ → 作品名(絵画、彫刻、インスタレーションなど)
〈 〉ヤマガッコ → 強調(カギカッコでも代用可)
〔 〕キッコウ → 訳註、引用元にない付け足し
「註」について
「・・・・と述べている1。」というように、「。」の前に数字を入れる。
本文の後にまとめるのではなくて、脚注がよい。
何を書くか
本文中で引用したり述べたりしたことの原典を明示。
書誌情報の書き方に従いさらに当該ページを表記。
(註15) 今福龍太『クレオール主義──The Heterology of Culture』青土社、1994年、155頁。
註の文章内で言及するときは、著者名、題名のあとは、カッコでくくる。
(註16)ジョン・アーリ『観光のまなざし──現代社会におけるレジャーと観光』(加太宏邦訳、法政大学出版局、1995年、8頁)によれば、旅行体験の視覚化は……
本文中で言うと流れを邪魔するけれど、言っておきたいこと。
(註17)tourismという単語が、英語の語彙に登場したのは、1811年頃であったという。
書誌情報の書き方
和書:編著者名『タイトル』出版社名、出版年
多木浩二『写真論集成』岩波書店、2003年
翻訳書:編著者名『タイトル』翻訳者名、出版社名、出版年
ラースロー・モホリ=ナジ『絵画・写真・映画』利光功訳、中央公論美術出版、1993年
雑誌論文:著者名「論文タイトル」『雑誌タイトル』巻数・号数、出版社名、出版年
林田新「写真の「危機」――伊奈信男と「エロ・グロ・ナンセンス」――」『美学』第238号、美学会、2011年
本の中の論文(分担執筆):著者名「論文タイトル」編著者名『タイトル』出版社名、出版年
岸文和「伝説のなかの《芸術家》――美術史の周縁」岩城見一編『芸術/葛藤の現場――近代日本芸術思想のコンテクスト』晃洋書房、2002年
洋書:編著者名, 本のタイトル, 出版者のある都市名: 出版社名, 出版年
Ian Jeffrey, Shomei Tomatsu, London: Phaidon, 2001
アンソロジーの中の論文:著者名, “論文タイトル,” 編者名, ed., 本のタイトル, 出版者のある都市名: 出版社名, 出版年
Leo Rubinfien “Skin of The Nation,” Leo Rubinfien, and Sandra S.Phillips, ed., Tomatsu Shomei : Skin of The Nation :New Haven : Yale Univer. Pr., 2004
洋雑誌論文
Thierry de Duve, “Time Exposure and Snapshot: The Photograph as Paradox,” October, Vol. 5, 1978
オンライン文献の表記:著者名「ページ名」URL、最終閲覧日
林田新「学術論文の書き方」https://www.arata-h.com/4156/、2020年10月27日アクセス
一度註に記した文献が再び出てきたとき
直前の註を繰り返すとき
同、12頁
ibid., 32
間に別の文献が入ったとき
木下前掲書、12頁
Ryan, op. cit., 32
同一著者による文献を複数参照した場合
木下『写真画論』12頁
Ryan, Picturing Empire, 32
引用の仕方
引用は、先行研究の議論や情報を利用することによって、自分の議論を補強するために行う。引用を行った際には、必ず出典を明示すること。また、それに対する自分の意見や解釈を明示すること。自分の主張を引用に語らせることのないように注意。
短い引用(文中引用)
引用が短い場合は、カギ括弧(「 」)でくくって示す。出典も明記すること。出典を示す[注]は文章の最後にうつこと。引用文中の句点は不要。
伊奈は、写真が表現すべき内容とは、社会生活の断面、自然世界の一般的事象」にカメラを向けることによって「表現される思想と感情」である、と述べている(1)。
長い引用(文外引用)
引用が長くなる場合は、引用箇所の全体を二文字分下げて書く。また、引用の前後は一行あけること。引用の出典を示す[注]は、引用の直前が望ましい
伊奈は「報道写真」を次のように定義し積極的に評価した(1)。
報道写真(Reportage-Foto)は、写真の諸分野の中でも、社会的に最も重要な意義を持つものである。印刷化された写真によるイデオロギー形成の力は絶大である。写真の表現形式は大衆的に最も理解しやすい。だから個人の体験はただちに国民の体験となる。否、その形式に特有な国際性によって、個人の体験はまたただちに全世界大衆の体験となるのである。
ここでは、「印刷化された写真」を通じて思想を形成・伝達し、大衆の支持を得るという報道写真の意義が述べられている。
もっと長くなる場合は、内容を要約して引用することもできる。要約して引用する場合も、必ず出典を明記すること。要約する場合は、もともとの文章の内容が適切に伝わるよう、注意しなければならない。
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